【アナライズ】映画「ナイト ミュージアム」より
ハリウッド映画音楽の【アナライズ】です。
取り上げるのは、、、
映画「ナイト ミュージアム (原題: Night at the Museum)」より、「Full House」の一部(以下動画の0:00~0:45)。
作曲家は、あの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の音楽で有名なアラン・シルヴェストリ氏です。
以下、自身でパート別に打ち込んでみた音源です(上から、全体、木管、金管、打楽器・ハープ・ピアノなど、弦楽器)。
※グロッケンのパートは、実際の音源ではチェレスタの可能性もあります。
理論
パート:木管:[フルート(1st,2nd)、アルトフルート、オーボエ(1st,2nd)、クラリネット(1st, 2nd)、バスクラリネット、バスーン(1st,2nd)、コントラバスーン] 金管:[ホルン、トランペット、トロンボーン、バストロンボーン、チューバ] 打楽器系:[ティンパニ、シンバル、グロッケン、ハープ、ピアノ] 弦:[ヴァイオリン(1st, 2nd)、ヴィオラ、チェロ、コントラバス]
Aパートについて。最初にsus2やsus4で入るのは、アラン・シルヴェストリ氏の一つの特徴であるように思います(「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のサントラにもそういった部分があったかと)。
その後Bパートでは、バスがA→G→F→Eと下がってきて、EとF間を行き来します。このC/EとFの行き来(Ⅰ/Ⅲ↔Ⅳ)は本当に様々なジャンルでよく使われます。Ⅰ、Ⅳ、Ⅴの第2転回形は、このようにバスをステップ(階段状)の動きにする際、とても有用です。
Cパートでは、キーCのⅣと考えられなくもないですが、音の使い方としてFリディアンの方がしっくりきます。そして半音下であるEリディアンに最後は落ち着きます。この転調は、ハリウッドの映画音楽でとてもよく出てきますね。
オーケストレーション
最初Aパートで、弦楽器がノンヴィブラートで入ってきます。sus系の和音とよく合い、ドライな印象を与えます。
Bパートからはヴィブラートがしっかり入ってウェットな印象に。ヴァイオリンとホルンがユニゾンで主旋律を成しています。
聴こえづらいですが、パートBから入ってくる木管楽器も主旋律を一部、そしてその対旋律も担っています。
そして7小節目からやっとホルン以外の金管楽器が和音を支える役割で入ってきます。パートCのFM7において、根音とM7の音を短2度になるボイシングでホルンを付けるのは、ETのテーマのジョン・ウィリアムズ氏もよく使っています。
最後のEリディアンの部分のフルートは、またもや他のパートに埋もれて聴こえづらいですが、Eリディアンを特徴づける音をうまく使って和音に飾りをつけています。
まとめ
凝った転調や和音は特に使われていませんが、王道なハリウッド感のあるオーケストレーションのとても良い例だと思います。
以上、映画「ナイト ミュージアム (原題: Night at the Museum)」より、「Full House」の一部でした。
【アナライズ】映画「Godzilla(ゴジラ)」より
ハリウッド映画音楽の【アナライズ】です。
取り上げるのは、、、
映画「ゴジラ(2014)」より、「Back to The Ocean」の一部(以下動画の1:51~2:38)。
作曲家は、アレクサンドル・デスプラ氏です。
デスプラ氏は、「真珠の耳飾りの少女」や「ゴーストライター」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」など、王道ハリウッドとはまた少し違った味を出す音楽を作っています。
今回はストリングスが主体の部分です。
以下、自身でパート別に打ち込んでみた音源です(上から、全体、木管、打楽器・ハープ・ピアノなど、弦楽器)。
※上記の打ち込み音源にはバスーンが入っていません。音源をアップロードしてから木管パートにバスーンを入れ忘れていることに気づきました...。
理論
※↑間違えている可能性があります...
パート:木管:[フルート(1st,2nd)、アルトフルート、クラリネット(1st, 2nd)、バスーン] 打楽器系:[ヴィブラフォン、ハープ、ピアノ、サブベース] 弦:[ヴァイオリン(1st, 2nd)、ヴィオラ、チェロ、コントラバス]
この短い音楽の中で、主人公(?)の奥さんと息子がまず再会し、そのすぐ後に奥さんと主人公が再会、つまり再会するたびに毎回少しずつ雰囲気を変えるためなのか、転調が多いです。3小節目の和音で、次の4小節目の転調を予感させます。9小節目でまた転調します。そして、2つ目の再会の瞬間に最後の転調をします。
リディアンスケールを意識しているような箇所が結構出てきたように感じます。再会で抱き合う瞬間に転調を合わせているからだと思いますが、拍子も興味深い変わり方をしています。
また、下行系統のモチーフが各パートでうまく組み合わされています。この下行系のモチーフはゴジラのメインテーマ(以下の動画の0:43あたりから16分音符の弦楽器で入ってきます)を初めとして、この映画のサントラの至るところに出てきます。
そもそも、この下行系のモチーフはどこから来たのでしょうか?おそらく、伊福部昭氏のあの有名なゴジラのオリジナルテーマのオマージュだと思われます。
オーケストレーション
基本的に弦楽器が主役の部分です。
木管は弦のモチーフの補助のように、一部で使われています。
金管は一切出てきません。
弦について、ヴァイオリンは長めの音符が多く、細かい動きをほとんどしていません。ビオラとチェロがDivisiされて、内声の動き(上記で述べた主に下行のモチーフ)をほぼ担っています。そして、その8分音符の内声が、ヴァイオリン、ビオラ→チェロへ、低い方へと受け渡されています。
打楽器について、ピアノとヴィブラフォンがこれまた下行系のモチーフで4音を繰り返しています。
主人公とその奥さんの再会の瞬間に向けて、オーケストレーションも「弦→打楽器→木管」と重なって華やかになっていきます。
まとめ
あまり派手な部分ではないですが、こういう部分でも細かい手法が隠れているものです。ストリングスの内声の旋律の受け渡し方などは、かなり参考になるかと思います。
以上、映画「ゴジラ(2014)」より、「Back to The Ocean」の一部でした。
【アナライズ】映画「マトリックス」オープニングロゴ
今回もハリウッド映画音楽の【アナライズ】です。
取り上げるのは、、、
映画「マトリックス」より、一番初めのオープニングロゴのサントラ(以下の動画で0:00~0:41)です。
作曲家は、ドン・デイヴィス氏です。
デイヴィス氏は、「マトリックス」で一気に注目を集め、その後に「ジュラシック・パークⅢ」や、最近では邦画「東京グール」のサントラも担当しているようです。
ハリウッド映画音楽には「マトリックス」でのブレイク以前から、オーケストレーションの面で関わっているものも多いです。アラン・シルヴェストリ氏や、特にジェームズ・ホーナー氏の裏でオーケストレーションを担当することもあり、映画音楽を支えていました。
以下、自身でパート別に打ち込んでみた音源です。上から順に、全体、木管楽器、金管楽器、打楽器(ピアノ、ハープ含む)、弦楽器。
理論
今回は使われている和声やスケールの分析というより、主にモチーフについての解説にしてみます。
全体的には、機械的な短いフレーズが集まって組み合わさって曲が形成されています。そのためか、少しだけ「現代音楽」的に聴こえます。
さて、「マトリックス」の中で、たびたび出てくるモチーフの1つ目が以下。
Ex. 1
ホルン(Eマイナー・トライアド)とトランペット(Cメジャー・トライアド)が交互にクレッシェンド・デクレッシェンドを繰り返します。ホルンの音量が小さくなると、トランペットが大きくなり、トランペットが小さくなるとホルンが大きくなります。
この曲の中で、後に金管がポリコード(あるいは多調)を構成しているパートが出てきますが、最初のこのモチーフによってそれを予感させています。
このモチーフが使われるのは、最初のトリニティが逃走して大ジャンプしている場面など、仮想空間内でキャラクターが「超人的」な力を発揮してスローモーションになっている場面が多い気がします。
以下は、2つ目のEエオリアンのモチーフ。
Ex. 2-1
Ex. 2-2
2つ挙げていますが、基本的に一つ目のEx. 2-1が基本形として使われています。このモチーフを担っているのは、中間部では低音域の楽器が、後半部では中~高音域の楽器です。これについてはオーケストレーションの解説部分で、もう少し詳しく書いてみます。
この単純なモチーフがパートごとに少しずつ異なった音型で重なっていたり、同じ音型でも少しずつズレていたりすることで、結果的に複雑な音に聴こえてきます。上記のYouTubeの映像のように、細かい文字が集まってモザイクアートのようにまた大きな文字を形成している、そんなイメージに合った曲だと聴いていて感じました。
このロゴでは修飾的な使われ方が主ですが、他の場面ではこのモチーフの組み合わせが中心になって盛り上げを担当している曲もあります。
オーケストレーション
まずピアノが2台分入っています。また、バスクラリネットが頻繁に使われていたり、打楽器ではウォーターフォン(waterphone)も登場したりと、普通のオケ編成とは少し違って特殊なところがあります。
木管楽器
前半部では、クラリネットとバスクラリネットがずっと同じ音型でトリルを刻み続けています。
中間部では、バスクラリネットとバスーンが、上記Ex. 2のモチーフを低音で刻みます。このように低音系の楽器でpp(ピアニッシモ)で細かく刻むと、ぼんやりとしたザワザワとした雰囲気を作ることができますね。バスーンは弦の音質をそんなに変えることなく、リズム音型を浮き上がらせることができますので、個人的にも大変重宝しています(ここではチェロも同じような刻みをしています)。
後半部ではフルートやピッコロが登場し、Ex. 2のモチーフをバラバラに奏でています。同じ音型を少し遅らせて他のパートでも鳴らしていくことで自然とディレイがかかったように聴こえてきます。
金管楽器
金管については聴いた通り、前半部ではホルンとトランペットがEx. 1のモチーフを奏でています。
中間部では、トロンボーンも加わってきて、クレッシェンドによって盛り上げの担当もしています。
後半部では、ホルン、トランペット、トロンボーンによってポリコードが形成されています。ただ、後半部の最初で一気に金管が鳴った時にはトランペットだけはppp(ピアニッシシモ)です。そこから最後にかけてトランペットはクレッシェンドしていきますが(ホルン、トロンボーンはロングトーンで鳴ったまま)、それとともに和音の聴こえ方も変わってきて面白いです。
打楽器・鍵盤楽器
前半部は、ピアノ1台目が3連符で「EB↑E↑」を、2台目が16分音符で「E↑B↑E↑B↑」をアルペジオで演奏しています。ここでも、似ているようで違う音型が組み合わされて結果的に複雑に、そして自然とディレイがかかったように聴こえてきますね(ハープはオクターブでEの音をアルペジオで奏でています)。
中間部では、ウォーターフォンが登場します。金属的で擦るような音色が特徴的。ホラーやサスペンスでよく使われそうな音色ですよね。
弦楽器
前半部では、ヴィオラがディヴィジされ、2パートに分かれてトリルしています。この部分は、クラリネット、バスクラリネットとユニゾンしています。
中間部で、今度はチェロがディヴィジされ、バスクラリネットとバスーンと同じモチーフEx. 2が基本になって演奏されています。
後半部では、Ex. 2のモチーフをヴァイオリンとヴィオラがバラバラと演奏し、高音域担当の木管(フルート、ピッコロ、オーボエ、クラリネット)のモチーフと混ざってディレイ効果がここでも生まれています。
まとめ
いかがでしょうか。
「マトリックス」のサントラは、他の映画のサントラと比べても少し特殊に個人的には感じます。それも機械的な短いモチーフを組み合わせているような音楽だからでしょうか。
「マトリックス」をちゃんと観たのは、中学生の時だったかと思いますが、大学生になって再び観たときにも「あ、これこれ、こんな音楽ついてたなぁ」と感じたことを覚えています。歌えるメロディでは決してありませんが、印象に強く残る音楽でした。
それも、こういった作りの曲が「マトリックス」の世界観にピッタリと合っていたためだったからかもしれません。次に「マトリックス」を観る時は今回の記事で取り扱ったようなことにも注意を向けながら観てみると面白いかも・・・?
以上、「マトリックス」のオープニングロゴのサントラ解説でした!
【アナライズ】映画「ビューティフル・マインド(原題: A Beautiful Mind)」より
お久しぶりです、ケニーです。
今回も、ハリウッド映画音楽の【アナライズ】です。
取り上げるのは、、、
映画「ビューティフル・マインド(原題: A Beautiful Mind)」より、「再び教壇に(Teaching Mathematics Again)」の一部(以下動画の0:00~0:55)。
作曲家は、ジェームズ・ホーナー氏です。
ホーナー氏が担当したのは、「タイタニック」「アバター」などビッグタイトルの数々。ハートフル・コメディからアクションやホラーまで、とても幅広くサントラを作っていました。
その中でも今回は、実在の天才数学者ジョン・ナッシュの半生を描いた映画「ビューティフル・マインド」を選びました。ヒューマンドラマ系の映画ではあるものの、音楽単体で聴くと、どこかファンタジーチックなところがあったり。こういった静かだけれど、じんわりと心に広がるような音楽を作るのがホーナー氏は、とても得意ですね。見習いたい...!
以下、自身でパート別に打ち込んでみた音源です(上から、全体、木管金管打楽器、ハープ、弦楽器)。
この曲は、ハープの存在感がとても大きいので、上の音源では単独に分けてみました。
理論
キー:Eリディアン→Aリディアン→Bリディアン
パート:フルート(1st,2nd)、クラリネット、ホルン、シンバル、ウィンドチャイム、トライアングル、グロッケン、ハープ2台、ヴァイオリン(1st, 2nd ,3rd)、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
構成としては、リディアンスケールのオンパレードです。機能というよりは、モーダルに考えているように聴こえます。ただ、EをⅠと考えたときにⅠ→Ⅳ→Ⅴと動いている(転調?)のは興味深いです。
同じようにミニマルな展開を含む感じでリディアンを使っているサントラとして、「WALL-E」の「Define Dancing」があります。ちょっと似てますよね。
主旋律で使わているスケールの音としては主に、「2、3、♯4、5、6」ですね。映画音楽系のオケを作るとき、個人的にはリディアンが出てきたらスケールの「7」の音を使いたくなります。
オーケストレーション
ハープと弦楽器が主役の曲です。豪華に使われた2台のハープは、スケールを上下したり、アルペジオしたり。ハープと弦だけでも曲としては成り立つレベルです。
木管・金管については、主旋律強化のためにホルンとフルート(強弱はmp[メゾ・ピアノ])で1stヴァイオリンとユニゾン。前にも記事で書いたかもしれませんが、ホルンはmp以下の強さで吹くと柔らかい音が鳴るため、金管楽器の中でも木管や弦へ自然と馴染ませやすいです。また、最後の2小節でクラリネットが登場しますが、こういったトリルのような音型はクラリネットによく合いますね。
弦について、1stヴァイオリンが上記のように主旋律、そして3rdがトレモロでスケールを上下し、ハープ(1台目)とユニゾンしています。チェロとコントラバスは、ハープ(2台目)と音型は似ており、同じような構成音でスケール上下、アルペジオしています。
そして打楽器では、ウィンドチャイムを主旋律が入ってくる小節の4分音符前のところから入れてありますね。次の盛り上がりの展開へ向けて入れると、うまくいくことが多いです。手っ取り早くファンタジー感が出せる楽器です。多用するとキラキラしすぎて耳障りにもなります笑(私もやりがちですが...!)。
まとめ
いかがでしょうか。ハリウッド映画音楽にはリディアンスケールがそれはとてもとても多く登場しますが、今回も例に漏れず。
この曲はハープが多用されていました。オケというと、いろんな楽器を使おうとしてしまったり、分散させてしまいがちですが、今回のように一つの楽器にかなり頼ったオーケストレーションも、有りなんだなと感じました。
以上、映画「ビューティフル・マインド(原題: A Beautiful Mind)」より、「再び教壇に(Teaching Mathematics Again)」の一部、でした。
【アナライズ】パイレーツ・オブ・カリビアン「ジャック・スパロウ」(一部)
はい、ケニーです。
今回は、オーケストレーションの【アナライズ】をしていきたいと思います。
取り上げるのは、、、
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン /デッドマンズ・チェスト」の一つ目のサントラ「ジャック・スパロウ(Jack Sparrow)」の一部です(4:03~4:23)
作曲家はみなさんおなじみ?ハンス・ジマー。
この一番盛り上がる展開の直前と、盛り上がってからの一部です。
自分で打ち込んでみたらこんな感じになりました。
(耳コピのパートもあるので、細かいところは違うかもしれません)
今回は、オーケストレーションに焦点を当てて、コンパクトな記事にしてみます。
オーケストレーション
取り上げた部分のオーケストレーション解説に入ります。以下はパート別の音源になります(上から、木管、金管、打楽器、弦の順番)。
全体
木管の印象が薄く、弦中心に和音や旋律が構成され、金管と打楽器で迫力をつけている、という感じです。和音構成としても古典的なもので、わかりやすい進行をしています。シンプルさと劇的な感じを保ち、音響としての迫力を突き詰めていったハンス・ジマーにはたくさんのフォロワー(作曲家)がいます。こういった系統の音楽はキャッチーで迫力があって、本当にかっこいいですよね。
全体的な特徴として、上記のシンプルさを強調する要素として、ユニゾンが出てきまくります。ハンスの他のこういう系の音楽の特徴でもありますが、「必殺ユニゾン!」ってレベルで出てきます。これくらい思い切ってくれると清々しい。
ということで、パートごとの解説へ。
木管楽器
取り上げた部分の中で使われている木管楽器はクラリネットとバスーンと...以上。
こういったハンス系の音楽は、木管の存在感が薄いことが多い気がします。ただそれも、金属的な響きと迫力を重視しての結果であると思うので、一つの手法として全然アリだと思います。
クラリネットのパートは、ホルンと対を成していてお互いに補い合っています。
バスーンは、コントラバスの1オクターブ上(一部、同じ音) です。バスーンがコントラバスを補うパターンは、オケではよくありますね。
金管楽器
使われている金管は、ホルン、トロンボーン、チューバの3種類。
ホルンは、上記のクラリネットと対をなしています。
トロンボーンは、ベースパート。コントラバスの1オクターブ上や同じ音程でユニゾンしています。
打楽器
ファンタジー系のサントラで使われるようなチェレスタやグロッケンなどのかわいい打楽器の音は出てくるはずもなく・・・。
バスドラムの低音の響きが今回かなり重要になってきます。とにかく、こういう系統の音楽で迫力を出すためには、打楽器に凝らないといけないかもしれません。
音源をEastWestのHollywood Percussionにしてから打楽器のぼんやりとした響きが改善されて、多少質感がよくなりました。余談。。。
弦楽器
この曲の最初の方でも中盤でも、もちろん取り上げた部分でもよく主役として登場してくるのがチェロのソロです。
バイオリンのソロほど軽快な音色ではないものの、チェロのソロが浮いたり沈んだりする旋律を奏でることで、ジャック・スパロウの酔ったような動きと彼のセクシーさがうまく表現されていると感じます。
ヴァイオリンとヴィオラとチェロ、前半部ではほぼユニゾンです。その中にチェロのソロも入っています(チェロが全体としても同じ旋律を奏でていますが、ソロの音色が強調されて入っているのが分かるかと思います)。
コントラバスは、どしんと構えて前半部は低音部を束ねています。そしてベースを担当していたかと思いきや、なんと後半部で主旋律に移ります。
低音系の楽器(コントラバス、チューバ、バストロンボーン、バスーン)に主旋律を任せています。
やることが大胆です、ハンス先生。。。
まとめ
いかがでしょうか。
今回はオーケストレーションに焦点を当てて書いてみました。同じハリウッドでもこれまでに紹介したジョン・ウィリアムズとはまた、全然違ったオーケストレーションをしていることが分かるかと思います(例:スター・ウォーズのメインテーマと今回のパイレーツ・オブ・カリビアンのように)。同じハリウッド映画音楽で迫力があっても、迫力の出し方がこんなにも違うのですね。
以上、「ジャック・スパロウ」(一部)の解説でした!
「ロード・オブ・ザ・リング」に見るライトモチーフ Part. 2
前回から少し時間が空いてしまいましたが、今回も映画「ロード・オブ・ザ・リング」のライトモチーフについての解説です。
予告通り、「旅の仲間」のテーマが映画の中でどう変化・発展していくか見ていきます。
前回のおさらい
ライトモチーフとは、簡単に言うと「あるモチーフや主題をアレンジして、特定の人物・感情・状況と結び付けて登場させていく手法」のことでした。あるモチーフが場面によって形を変えて出てくるのですね。
ライトモチーフの中には、「旅の仲間」(フロドが指輪を捨てるのに協力・同行する仲間たち、およびその結びつき)のテーマもありました。
楽譜だとこんな感じです。
「旅の仲間」のテーマ発展
「旅の仲間」のテーマを映画で出てくる順に解説していきます。
タイトル
最初は「The Fellowship Of The Ring(旅の仲間)」のタイトルが出る場面です。
タイトルでこれが画面に出ているときにこのモチーフを流すことで、「旅の仲間」のモチーフであると、印象付けています。
ここでのアレンジは、ホルンと弦を中心に書かれており、(前の「シャイア」のテーマからの流れもあってか)落ち着いたイメージです。
全体的には落ち着きがありつつも、ピアノで吹かれたホルンの前半部、後半部では弦に主旋律が移って盛り上がり、これから始まる壮大な物語を連想させます。
旅立ちーサムとフロドー
次に出てくるのが、サムとフロドが「旅の仲間」としてシャイアから旅立つ場面。
サムにとって「ここから先はこれまで出たことがない」という話をしているところからの、足を踏み出す場面でテーマが流れます。
まだ2人ではありますが、旅の仲間です。そして、指輪を捨てる長い道のりを共にする旅の仲間として、しっかりと歩み始めた場面。
アレンジは、ホルンとイングリッシュホルン(コール・アングレ)によって主旋律が奏でられています。まだ2人なので、かなり控えめなアレンジになっています。
ガンダルフ、アイゼンガルドのサルマンのもとへ
その後に出てくるのは、ガンダルフがサルマンに助言を求めて向かう場面。
「旅の仲間」とまではいかなくても、助言をもらいに行くので、この時点ではガンダルフにとっても観客にとっても、どちらかというとサウロンを味方として扱っているわけです。なので、「旅の仲間」のテーマが流れたように思います。
この後、残念なことにすでにサルマンがサウロンの側についていたことが分かるのですが、これを示唆するようなアレンジをしています。
金管によって強く鳴らされる主旋律の下に、「モルドール」や「ナズグール(黒の騎士)」のテーマで見られたようなフレーズが入っており、けたたましく鳴るティンパニとシンバルの後にはヴァイオリンによる不協和音が奏でられます。
旅の仲間のテーマに続いて、「ナズグール」のモチーフがそのまま入ってきます。これで、この後の場面を観なくても、サルマンが闇の勢力に堕ちていることが読み取れます。
ホビットたちとアラゴルン
ブリー村を出て、ホビット一行とアラゴルンが歩いている場面で今度はテーマが出てきます。
旅の仲間のモチーフの前半部が何度か形を変えて出てきます。
そして、以下の動画(上の動画の続きです)で、旅の仲間の全体像が表れていきます。
アレンジとしては、「旅立ちーサムとフロドー」のアレンジと比べて主旋律を奏でるホルンが1つから3つになり、その他の金管が厚みを作り、ティンパニ(またはバスドラム)もリズムとして加わり、だいぶ力強い響きになってきました。これはアラゴルンが「旅の仲間」に加わったからですね。ただ、まだ仲間の完成には至らないので、まだ少しゆっくりとしたアレンジです。
旅の仲間ーエルロンドの会議ー、ー結成後の旅立ちー
次に出てくるのが、エルロンドの会議の場面。
ここで、「旅の仲間」のテーマが完成形になります。
4:06からの完成形に至るまでのテーマのビルドアップのされ方にも注目です。
フロドの仲間として、次々に会議のメンバーが加わっていき、荘厳な雰囲気のアレンジで進んでいきます。そこでサムやメリー、ピピンのホビットたちが立て続けに出てくるコミカルな場面を挟むところで、いったんホビットたちを象徴する「シャイア」のテーマが流れてきます。そして全員が並び、エルロンドが「旅の仲間」の宣言するときにテーマの完成形となります。最高な場面ですね...。
こうやってモチーフとモチーフを自然な流れでつなげていく作曲家のハワードには憧れます。。。
次に同じくエルロンドの会議の終了後に、旅の仲間としての「契約」について話されてる場面でもモチーフは出てきます(以下の動画、0:10~1:00)。
上記の50秒の間に、「旅の仲間」のテーマが出てくる中にも、「シャイア」のテーマの断片が入り混じって出てきます。この部分については、フロドの心境を描写しており、自身が「旅の仲間」の一員であるという意識が強まり、「シャイア」の住民としての意識が二の次(薄まって)いることを表している、とハワードは述べています。
上の動画の1:48から「旅の仲間」の正式な旅立ち、歩み始めを表すかのように、フルオーケストラのアレンジが登場します。
カザド=ドゥムの橋
今度は、橋が崩壊する中で危機一髪、うまく乗り越えていく場面。
旅の仲間が橋によって分断されそうになったけれど、また一つのまとまりとして動いていくときにテーマが流れてきます。しかし、すぐにこのテーマは、まだ終わっていないバルログやオークの脅威を示唆するかのように、アイゼンガルドのモチーフに見られた5/4拍子に変わっていきます。
ロスロリアンを発った後ーアンドゥインの大河ー
ガンダルフを失い、ロスロリアンの森での一時の穏やかさの後、アンドゥインの大河に旅の仲間の一行は出発し出ていきます。そのときに以下のアレンジ(0:00~0:05)でモチーフの断片が使われています。
ガンダルフをすでに失い、当初の「旅の仲間」が崩壊し始めていることを示唆しています。これ以降はモチーフの断片がほとんどになります。
上の動画の2:40~2:52でもモチーフの断片が出てきます。ここではフロドが本当は独りで仲間を持たずに進んでいくべきではないのかと悩み始めてる場面に続くシーンです。
アラゴルンとボロミアの間で意見対立が起きています。「旅の仲間」の内部のほころびを表すかのように、モチーフは断片のみとなり、不穏な和音へとつながっています。
ボロミアの死後~旅の仲間の解散
ボロミアの死後、それを悼むかのように金管により優しく「旅の仲間」のテーマ(断片)が奏でられます。また1人仲間を失い、その上メリーとピピンはウルク=ハイ、オークにより連れ去られてしまいました。旅の仲間のテーマの完成形から、この時点で勢いがかなり弱められているのがわかります。
そして、以下の動画のフロドが立っている場面につながります。
フロドが独りで旅立とうとしている場面。最初の0:00~0:16でまたモチーフの断片が出てきますが、モチーフが全部奏でられずに、最終的に無音に向かってモチーフが消えていきます。これで、当初の「旅の仲間」が解散したことを表現しています。
最後に、以下の動画でモチーフが少し復活して登場してきます。
当初の「旅の仲間」は解散してしまったものの、連れ去られたメリー、ピピンのため、あるいは旅立ったフロドとサムのために離れていても間接的にでもできることはある、とアラゴルン、レゴラス、ギムリの3人が再び別の「旅の仲間」として(もしくは離れていても「旅の仲間」の絆は残っているという意味で)、テーマが流れてきます。
前の完成形のアレンジと勢いは違いますが、勇ましさは取り戻しました。失ってもまだまだ敗北ではない、希望があることを表しているように感じます。
まとめ
いかがでしょうか?
「旅の仲間」のモチーフ一つとっても、このようにいくつものバリエーションがあり、場面によって変化していきます。実際には、様々なモチーフが複雑に絡み合って映画の中で音楽が登場してきます。
本来、場面にとっては実際には存在せず異質な存在である音楽を、このようにライトモチーフの手法を使って自然に場面に馴染ませ、場面の裏にある心情や状況を伝えることに成功しています。最近の映画では、「ロード・オブ・ザ・リング」のサウンドトラックはトップレベルで、ライトモチーフの使い方がうまいのではないでしょうか。
映画にとって(すべての映画にとってではありませんが)、音楽がストーリーテリングにおいて重要な役割を果たしていることを感じていただけたら嬉しいです。
ソース:
・Musical Themes in "The Lord of the Rings"
・http://www.elvish.org/gwaith/pdf/fotr_annotated_score_2.pdf
・Music of The Lord of the Rings film series - Wikipedia
「ロード・オブ・ザ・リング」に見るライトモチーフ Part. 1
今回は、映画「ロード・オブ・ザ・リング」の音楽で使われるライトモチーフの手法について触れていきます。
次回は、そのうちの一つのモチーフを取り上げて、映画の中でどのように発展していくか見ていきます(というより、今回はそれをやりたいがための導入記事です笑)
ライトモチーフとは?
ライトモティーフ(ライトモチーフ、独: Leitmotiv )とは、オペラや交響詩などの楽曲中において特定の人物や状況などと結びつけられ、繰り返し使われる短い主題や動機を指す。単純な繰り返しではなく、和声変化や対旋律として加えられるなど変奏・展開されることによって、登場人物の行為や感情、状況の変化などを端的に、あるいは象徴的に示唆するとともに、楽曲に音楽的な統一をもたらしている。示導動機(しどうどうき)とも。
以上、Wikipediaからの引用です。
つまり、あるモチーフや主題をアレンジして、特定の人物・感情・状況と結び付けて登場させていく手法です(Wikiに書いてある通りの説明ですが...)。
「ロード・オブ・ザ・リング」(以下、LOTR)のサウンドトラックでは、この手法が使われまくってるわけですが、他の映画だと「スター・ウォーズ」などもそうです(レイアのテーマ、フォースのテーマ、ヨーダのテーマのように人物・集団や状況に関してのテーマがありますよね)。
「LOTR」の1作目「旅の仲間」ではどのようなライトモチーフがあるのでしょうか。
全部取り上げてるとかなりの量になってしまうので、いくつか主要なものを取り上げます。
一つの指輪
この「一つの指輪(サウロンの指輪)」を滅ぼすことをめぐってLOTR三部作では話が展開されていきます。
持ち主の心を誘惑し、欲望の力で破滅させて、サウロンの元に戻ろうとする指輪ですが、こちらのモチーフは以下のようなもの。
ヴァイオリンが高い音域の中で、音符が上下にジグザグに揺らめいて動いていきます。
指輪の秘める魔力、妖艶な印象が強く感じられるモチーフです。本当にぴったりな旋律だと思います。
このモチーフは、最初のガラドリエルによって語られるプロローグでも登場します。
モルドール、サウロン
こちらも上記のプロローグの動画(2:08~2:12)に少し登場するモチーフです。
上の動画だと分かりにくいので、3作目からのものではありますが、以下に貼っておきます。
これは「一つの指輪」の変化形だと考えられます。ある意味サウロンの一部は指輪で、指輪の一部はサウロンであり、モルドール≒サウロンのイメージからも、モチーフが似たものだとしても不思議ではありません。
2つのモチーフの楽譜を見比べてみましょう(「上行し細かく上下してから下の音へ」の流れが同じです)。
ちなみに旋律を奏でてるのは、「rhaita」という北アフリカの楽器みたいです。
ホビット庄(シャイア)
ホビット庄のテーマです。こちらは、ホビットたちが場面の中心になったり、ホビット庄やそれが連想されるような場面で使われます。ペンタトニックスケールを軸に構築された旋律で、童謡のような素朴な印象を与えます。
このモチーフを使った音楽のバリエーションが劇中では数多く出てきますが、下の動画(少し長めです)ものは英語で"Hobbit's Understanding"というバリエーションの名前で呼ばれています。
ホビット同士が、旅の困難や苦闘をお互いに理解しあったときに主に使われるバリエーションです。
旅の仲間
旅の仲間を表すときに使われるモチーフです。
今回はこちらの説明は省略します。
次回の記事で、このモチーフがどのように劇中で場面によって発展・変化していくかを見ていきます。
アイゼンガルド、サルマン
5拍子が特徴的なモチーフです。奏でるのはトロンボーンとチューバ。5拍子を刻む打楽器は、アンヴィル(金床)という楽器や金属のプレートで、アイゼンガルドの工業的なイメージを一層引き立てています。
ナズグール(指輪の幽鬼、黒の乗手)
サウロンに隷属している9人の幽鬼(もとは人間の王たち)のテーマです。
以下のバリエーションでは、グレゴリオ聖歌「怒りの日」のモチーフを利用していますね (1:17からチューバなどが奏でています)。
↓グレゴリオ聖歌「怒りの日」
この「怒りの日」のモチーフは、「死」やそれに関連したものを表すモチーフとして他の様々な映画でも多く使われています。これについては、また別の記事で扱います。
ロスローリエン
このモチーフは、ロスローリエンを表すものとして、あるいはそこを治めるガラドリエルのテーマとして使われます。Fフリジアン・モードの旋律です(バリエーションによっては、最後の音が半音高くなりB♭のハーモニックマイナーになることも)。
以下の動画は、ロスローリエンに旅の仲間が足を踏み入れた場面。
そして2つ目は、プロローグでガラドリエルが語るところで使われています。
まとめ
いかがでしょうか?
1作目の中には、他にもまだまだ様々なモチーフやそのバリエーションがありますので、気になった方は注意して映画を観てみると何か発見があるかもしれません。
ライトモチーフを意識しながら映画を観るとまた一層違う楽しみ方ができるかと思います。場面によってモチーフの使われ方、アレンジが変わりますが、その違いも作曲家は意図して作っていたりします。
次回は、「旅の仲間」のモチーフがどのように映画の中で変化していくのかに注目していきます。
ハリウッド映画音楽の作り方 (♭6編) [Part.2]
ケニーです。
前回に引き続き、「ハリウッド映画音楽の作り方」シリーズ第一弾のPart.2。Part.1は、理論面(メロディやハーモニーなど)についてでしたね。
今回も、以下3曲についてのオーケストレーション・打ち込みについて書きます。
オーケストレーション・打ち込み
ポイントに絞って書いていきます。
Ex. 1
楽器一覧
金管:ホルン【主旋律・和音】、トランペット【主旋律】、トロンボーン【和音】、チューバ【ベース】
打楽器:シンバル、ゴング、トレイラートム
鍵盤:ピアノ【アルペジオ】
弦:ヴァイオリン【アルペジオ、刻み】、ヴィオラ【刻み】、チェロ【刻み】、コントラバス【ベース、刻み】
このトラック[Ex. 1]はマーベル風を意識して躍動感を出したいので、刻み・アルペジオが重要となってきます。
まずは刻み。
キレが欲しいので、弦楽器たちに主に刻んでもらいます。
その上に、後半は刻み度合い(迫力)を上げるために、小節の頭でトロンボーンにスタッカート、その頻度を増やして(小節頭と3拍目)いきます。
次にアルペジオ。
ここにはPart.1でも書いた♭6の音が含まれるので、重要な部分になります。
ヴァイオリンにだけアルペジオの刻みをさせるのでもいいですが、それだと少し乾いた感じがしてしまうのと、重要な部分であるにもかかわらず薄い印象になってしまいます。
ここはユニゾンで、フルート・クラリネット(オクターブ下)にもアルペジオしてもらいましょう。
これでは終わりません!隠し味で入れている楽器があります。ピアノです。
これがあることでもっとキリッとした印象になります。
では、出来上がったアルペジオパートのみをお聴きください。
打ち込み
音源に関して、木管も金管もEastWestのHollywoodシリーズを使っています。
どちらもすべてパッチとしては「Sus Accent」系のものです。
本当は、音色や奏法ごとにパッチをどんどん読み込んでいきたいところですが、PCのスペックとの相談でこうなっています...。
ただ、こちらのパッチはベロシティを強くするとスタッカートらしい音が出ますので、そこで調整しながら打ち込み。PCに大変やさしい打ち込みとなっております。
Ex. 2
楽器一覧
木管:フルート【主旋律】、オーボエ【主旋律】、クラリネット【和音】
打楽器:シンバル
民族ボイス【主旋律】
クワイア【和音】
弦:ヴァイオリン【主旋律】、ヴィオラ【副旋律・和音強化】、チェロ【アルペジオ】、コントラバス【ベース】
こちらのトラックは荘厳な感じにしたかったので、あまり細かく動くパートはありません。一番細かく動いてるパートがチェロで、アルペジオを担当しています。
オリジナルバージョンには金管は入っていませんが、もう少し厚みが欲しい場合は、ホルンを和音で鳴らしたりも。
以下、ホルンを軽く入れたバージョンです。
ここにハープをチェロとユニゾンで入れてみても、神聖な感じが強まったり。
楽器を入れれば入れるほど豪華になり、厚みも増しますが、上手く入れていかないと透き通った感じがなくなっていくかもしれませんので、お気をつけて。。。
今回はクワイアの質感をある程度残したかったので、あまり楽器数自体は多くしていません。
打ち込み
クワイアで使っているのは、Omnipshereのクワイアパッチです。
例によってEastWestのクワイア音源を持ってはいるのですが、重いのでパス!笑。
Omnisphereでも、裏で鳴らす分にはそんなに悪くないです。
民族調ボイスは、これまたEastWestのVoices of Passionのケルティックな女性ボーカルパッチを使っています。声のかすれる感じがうっとうしい場合は、EQでカットしてみるのも良いでしょう。
Ex. 3
楽器一覧
木管:ピッコロ【スケール上下】、フルート【スケール上下】、クラリネット【スケール上下】
金管:ホルン【主旋律】、トロンボーン【和音、ベース】、チューバ【ベース】
打楽器:トライアングル、シンバル、ティンパニ、トレイラートム
ハープ【スケール上下】
弦:ヴァイオリン【トレモロ】、ヴィオラ【スタッカート】、チェロ【ベース[オク上]】、コントラバス【ベース】
Ex. 3は、アドベンチャー・アクション系のトラックということで、何かを予感させていくようなサウンドにしたいです。
トライアングルとヴァイオリンのトレモロの合わせ技は結構好きで使います。「何か予感させるような緊張感」をうまく出せます。
打楽器について、、、トレイラートムをティンパニと一緒に鳴らすことで、打楽器の迫力が倍増します。おすすめです。
ティンパニーのみ
トレイラートムを入れたバージョン
打ち込み
フルート・クラリネットのかけ上がり・下がりにも、パッチは「Sus Accent」を使ってます...(高スペックPCにしたい...)。
ピッコロもこのパッチだと変になることが多いので、さすがに「Leg Slur Runs」でラン用のパッチを使っています。
トレイラートムは、EastWestのStormdrum 2のものです。
以上、Part. 2はここまで。
「ハリウッド映画音楽の作り方」の第一弾でしたが、いかがでしたでしょうか。
第一弾ということは、反応が良ければ第二弾もあります(?)
ハリウッド映画音楽の作り方 (♭6編) [Part.1]
この「ハリウッド映画音楽の作り方」シリーズでは、ハリウッドっぽいオーケストラにするためのテクニックを取り上げて書いていきます。
今回はそのシリーズの第一回目になります。
まずは以下の3つの音源をそれぞれお聴きください。
いかがでしょうか。
3つともハリウッドの映画音楽でありそうだな、という感じがしませんか?
Ex. 1は、マーヴェル映画風
Ex. 2は、ファンタジー映画風
Ex. 3は、アドベンチャー、アクション映画風
和声面、オーケストレーションなどで「ハリウッドっぽく」聴かせているのですが、そのテクニックを一部公開したいと思います。
この記事はPart. 1ということで、和声面について書きます。
(Part. 2では、オーケストレーション・打ち込みについて触れたいと思います)
理論
3つの音源(Ex. 1-3)で共通して使っている特徴的な音があります。
「♭6」です。
キーがCの場合だと、「A♭」が「♭6」の音になりますね。
この♭6は、ハリウッド映画音楽だとメロディノートとしてはもちろん、伴奏部のアルペジオの一部としてよく使われます。
まずは伴奏パート(アルペジオ)の例です。
Ex. 1では、3連符で刻んでいる音が以下のように「1,3,5,♭6,5,3,1,♭6,5,♭6,5,3」の繰り返しです。
(Ex.1-3はいずれもキーはAです)
Ex. 2でも3連符でチェロが「1,3,5,♭6,5,3」の繰り返し。
この音を入れると、人によって感じ方は変わるかとは思いますが、少しミステリアスな雰囲気が出ます。
例ではどちらも3連符ですが、8分・16分でもお好みでどうぞ。
次にメロディの例です。
以下は、Ex. 1とEx. 3のホルンの最初の旋律です。
Ex. 1
Ex. 3
どちらも似た音型です。「♭6」の音に到達する前に短めの音符でスケール・コードトーンを駆け上がってから到達しています。ハリウッド映画音楽で♭6をこのような雰囲気の曲で使う場合は、上記の音型がかなり多いように思います。
コード、ハーモニー面での解説をそれぞれ。。。
Ex. 1
最初の10小節は基本的にⅠ(♭13)[A♭13]のコードですが、コードというよりは以下のスケールで考えて作っています。
※わかりやすいようにキーCにしています
6、7の音がフラット♭されているスケールです。
最後の2小節分は、♭Ⅵ→Ⅳの流れです。♭Ⅵに関しては、ハリウッドで本当によく使われます。
Ex. 2
こちらは、Ⅰ(♭13)→♭Ⅵ(♭13)の繰り返しという流れになっています。
長三度下に転調したと考えてもいいかもれしません。
ここでも♭Ⅵが出てきましたね。♭6のメロディノートと親和性があるのです。
Ex. 3
メロディについては、上記「♭6」の説明の通りです。
ベースノートとして1の音(例ではA)がずっと鳴り続けています。
最後の方の木管やハープの駆け上がりも、上記の6、7をフラット♭したスケールを少し変形させて使っています。上行時は6の音にだけ♭を、下降時は6、7に♭。
ということで、Part. 1はここまで。
Part. 2(オーケストレーション・打ち込み)を近いうちに更新します!
「美女と野獣(Beauty and the Beast)」5音の魔術
どうも、ケニーです!
今回は、前記事2つとは少しスタイルを変えてメロディとモチーフについて書きたいと思います。コード進行などについては触れません。
題材は、エマ・ワトソン主演で今話題になってる映画「美女と野獣」のテーマ曲です。
作曲したのはディズニーではお馴染み、アラン・メンケン(Alan Menken)氏。
彼はその他多くのディズニー映画の作曲に携わっています(「アラジン」、「リトル・マーメイド」などなど...)
どれもキャッチーで夢が広がるような曲ばかりですよね!
考察
この「Beauty and the Beast」という曲、アリアナが最初に"Tale as old as time"という音型を歌った時点で、1曲を通したモチーフが決定しています!(歌に入る前のイントロでももちろんそれが使われてますが)。
以下はアリアナの最初のパート8小節分です。
※細かいフェイクや歌い回しは簡略化しています。
基本的に5音で一つのかたまり(8分音符4つ+2分音符or全音符)になっているのがよくわかります。
・1、3、5小節目の8分音符は上行形
・6、7小節目の8分音符は下行形
この後、ジョンのパートの"Both a little scared"から上下ジグザグに進んだりはしますが、「8分音符4つ+2分音符or全音符」の音型は1曲通して崩れません。
曲のメロディすべてが、最初の"Tale as old as time"のメロディを変化させたものです。
「何度も繰り返す」
これは音楽で本当に大事な部分になります。
繰り返すことで、人の記憶にも残りやすくキャッチーなメロディとなります(その繰り返し方も大変重要にはなってきます)。
これは分かりやすく、モチーフを大切に何度も使っている曲ですが、基本的にキャッチーなポップスでは、モチーフをむやみやたらに変えるようなことはしないのが得策かと...。
5音で一つのかたまりの例としてもう1曲参考に挙げて、記事を締めくくります。。。
Harry Connick Jr. - It Had to Be You
以上です!
もっとこういう解説が読みたい、知りたいといったことがあればできる限り反映させていけたらな、と考えていますので、お気軽にコメントなどいただければと思います。