ハリウッド映画音楽の作り方 (♭6編) [Part.1]
この「ハリウッド映画音楽の作り方」シリーズでは、ハリウッドっぽいオーケストラにするためのテクニックを取り上げて書いていきます。
今回はそのシリーズの第一回目になります。
まずは以下の3つの音源をそれぞれお聴きください。
いかがでしょうか。
3つともハリウッドの映画音楽でありそうだな、という感じがしませんか?
Ex. 1は、マーヴェル映画風
Ex. 2は、ファンタジー映画風
Ex. 3は、アドベンチャー、アクション映画風
和声面、オーケストレーションなどで「ハリウッドっぽく」聴かせているのですが、そのテクニックを一部公開したいと思います。
この記事はPart. 1ということで、和声面について書きます。
(Part. 2では、オーケストレーション・打ち込みについて触れたいと思います)
理論
3つの音源(Ex. 1-3)で共通して使っている特徴的な音があります。
「♭6」です。
キーがCの場合だと、「A♭」が「♭6」の音になりますね。
この♭6は、ハリウッド映画音楽だとメロディノートとしてはもちろん、伴奏部のアルペジオの一部としてよく使われます。
まずは伴奏パート(アルペジオ)の例です。
Ex. 1では、3連符で刻んでいる音が以下のように「1,3,5,♭6,5,3,1,♭6,5,♭6,5,3」の繰り返しです。
(Ex.1-3はいずれもキーはAです)
Ex. 2でも3連符でチェロが「1,3,5,♭6,5,3」の繰り返し。
この音を入れると、人によって感じ方は変わるかとは思いますが、少しミステリアスな雰囲気が出ます。
例ではどちらも3連符ですが、8分・16分でもお好みでどうぞ。
次にメロディの例です。
以下は、Ex. 1とEx. 3のホルンの最初の旋律です。
Ex. 1
Ex. 3
どちらも似た音型です。「♭6」の音に到達する前に短めの音符でスケール・コードトーンを駆け上がってから到達しています。ハリウッド映画音楽で♭6をこのような雰囲気の曲で使う場合は、上記の音型がかなり多いように思います。
コード、ハーモニー面での解説をそれぞれ。。。
Ex. 1
最初の10小節は基本的にⅠ(♭13)[A♭13]のコードですが、コードというよりは以下のスケールで考えて作っています。
※わかりやすいようにキーCにしています
6、7の音がフラット♭されているスケールです。
最後の2小節分は、♭Ⅵ→Ⅳの流れです。♭Ⅵに関しては、ハリウッドで本当によく使われます。
Ex. 2
こちらは、Ⅰ(♭13)→♭Ⅵ(♭13)の繰り返しという流れになっています。
長三度下に転調したと考えてもいいかもれしません。
ここでも♭Ⅵが出てきましたね。♭6のメロディノートと親和性があるのです。
Ex. 3
メロディについては、上記「♭6」の説明の通りです。
ベースノートとして1の音(例ではA)がずっと鳴り続けています。
最後の方の木管やハープの駆け上がりも、上記の6、7をフラット♭したスケールを少し変形させて使っています。上行時は6の音にだけ♭を、下降時は6、7に♭。
ということで、Part. 1はここまで。
Part. 2(オーケストレーション・打ち込み)を近いうちに更新します!