【アナライズ】パイレーツ・オブ・カリビアン「ジャック・スパロウ」(一部)
はい、ケニーです。
今回は、オーケストレーションの【アナライズ】をしていきたいと思います。
取り上げるのは、、、
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン /デッドマンズ・チェスト」の一つ目のサントラ「ジャック・スパロウ(Jack Sparrow)」の一部です(4:03~4:23)
作曲家はみなさんおなじみ?ハンス・ジマー。
この一番盛り上がる展開の直前と、盛り上がってからの一部です。
自分で打ち込んでみたらこんな感じになりました。
(耳コピのパートもあるので、細かいところは違うかもしれません)
今回は、オーケストレーションに焦点を当てて、コンパクトな記事にしてみます。
オーケストレーション
取り上げた部分のオーケストレーション解説に入ります。以下はパート別の音源になります(上から、木管、金管、打楽器、弦の順番)。
全体
木管の印象が薄く、弦中心に和音や旋律が構成され、金管と打楽器で迫力をつけている、という感じです。和音構成としても古典的なもので、わかりやすい進行をしています。シンプルさと劇的な感じを保ち、音響としての迫力を突き詰めていったハンス・ジマーにはたくさんのフォロワー(作曲家)がいます。こういった系統の音楽はキャッチーで迫力があって、本当にかっこいいですよね。
全体的な特徴として、上記のシンプルさを強調する要素として、ユニゾンが出てきまくります。ハンスの他のこういう系の音楽の特徴でもありますが、「必殺ユニゾン!」ってレベルで出てきます。これくらい思い切ってくれると清々しい。
ということで、パートごとの解説へ。
木管楽器
取り上げた部分の中で使われている木管楽器はクラリネットとバスーンと...以上。
こういったハンス系の音楽は、木管の存在感が薄いことが多い気がします。ただそれも、金属的な響きと迫力を重視しての結果であると思うので、一つの手法として全然アリだと思います。
クラリネットのパートは、ホルンと対を成していてお互いに補い合っています。
バスーンは、コントラバスの1オクターブ上(一部、同じ音) です。バスーンがコントラバスを補うパターンは、オケではよくありますね。
金管楽器
使われている金管は、ホルン、トロンボーン、チューバの3種類。
ホルンは、上記のクラリネットと対をなしています。
トロンボーンは、ベースパート。コントラバスの1オクターブ上や同じ音程でユニゾンしています。
打楽器
ファンタジー系のサントラで使われるようなチェレスタやグロッケンなどのかわいい打楽器の音は出てくるはずもなく・・・。
バスドラムの低音の響きが今回かなり重要になってきます。とにかく、こういう系統の音楽で迫力を出すためには、打楽器に凝らないといけないかもしれません。
音源をEastWestのHollywood Percussionにしてから打楽器のぼんやりとした響きが改善されて、多少質感がよくなりました。余談。。。
弦楽器
この曲の最初の方でも中盤でも、もちろん取り上げた部分でもよく主役として登場してくるのがチェロのソロです。
バイオリンのソロほど軽快な音色ではないものの、チェロのソロが浮いたり沈んだりする旋律を奏でることで、ジャック・スパロウの酔ったような動きと彼のセクシーさがうまく表現されていると感じます。
ヴァイオリンとヴィオラとチェロ、前半部ではほぼユニゾンです。その中にチェロのソロも入っています(チェロが全体としても同じ旋律を奏でていますが、ソロの音色が強調されて入っているのが分かるかと思います)。
コントラバスは、どしんと構えて前半部は低音部を束ねています。そしてベースを担当していたかと思いきや、なんと後半部で主旋律に移ります。
低音系の楽器(コントラバス、チューバ、バストロンボーン、バスーン)に主旋律を任せています。
やることが大胆です、ハンス先生。。。
まとめ
いかがでしょうか。
今回はオーケストレーションに焦点を当てて書いてみました。同じハリウッドでもこれまでに紹介したジョン・ウィリアムズとはまた、全然違ったオーケストレーションをしていることが分かるかと思います(例:スター・ウォーズのメインテーマと今回のパイレーツ・オブ・カリビアンのように)。同じハリウッド映画音楽で迫力があっても、迫力の出し方がこんなにも違うのですね。
以上、「ジャック・スパロウ」(一部)の解説でした!